近年、歯周病とさまざまな全身疾患との関係を調べた研究により、深い相関があることがわかっています
例に挙げると、糖尿病が歯周病の発症・悪化に関わっていることは以前から言われていましたが、反対に歯周病の治療を行うことで血糖値も落ち着いてくるということが判明してきています
このほかにも、誤嚥性肺炎や心疾患などにも歯周病が関連があるとされています
全身疾患とお口との関連
代謝・内分泌疾患
①糖尿病
糖尿病とは
糖尿病は、血液中のグルコース濃度(血糖値)が高くなる病気です
お口との関連
高血糖が続くことにより口腔環境において歯周病などの易感染症や白血球の機能不全によるため抜歯や口腔内手術などによる出血が止まりにくい傷が止まりにくいなどの創傷治癒不全が起こります
②骨粗鬆症
骨粗鬆症とは
骨密度が低下し、骨が脆くなる病気です
お口との関連
BP製剤(骨密度を増加させ、骨折のリスクを減少させる薬剤群のひとつ)を投与されている骨粗鬆症の患者さんが、抜歯などの組織を傷つける歯科治療を受けてその部位が感染により顎の骨に血流が十分に供給されなくなり骨が壊死する状態(顎骨壊死)が起こることがあります
③甲状腺疾患
甲状腺疾患とは
甲状腺の機能や構造に異常が生じる病気の総称
お口との関連
甲状腺ホルモンが過剰に分泌される状態(甲状腺機能亢進症)の時期には、
・舌の震え
・頬や舌、歯肉の色素沈着
・唇の腫れ
・舌の肥大化
を認めることがあります
また、甲状腺治療の影響により
・唾液分泌の減少
・口腔内乾燥
が起こる場合もあります
甲状腺治療が不十分な時に抜歯などの組織を傷つける歯科治療を行うとショックなど重篤な状態に陥ることがあります
歯科で使用するアドレナリン添加の表面麻酔は原則的に禁忌です
甲状腺ホルモン値が高くないか確認する必要があります
消化器疾患
①胃食道逆流症(GERO)
胃食道逆流症(GERD)とは
胃の内容物が食道に逆流することによって引き起こされる病状です
お口との関連
胃食道逆流症患者さんでは、特に夜間において胃酸や胃内容物がお口の中に逆流することがあり、この状態が続くと酸によって
・歯の酸蝕症
・むし歯
・知覚過敏
が起こりうることがあります
また、お口の乾燥を訴えることも少なくありません
お口の特徴や患者さんの主訴から歯科医院でも胃食道逆流症を疑うことも大切です
②胃炎・胃癌
胃炎とは
胃の内壁が炎症を起こす状態を指します
胃癌とは
胃の内壁に発生する悪性腫瘍の一種です
お口との関連
胃癌に対しての抗癌薬治療の影響で、お口の粘膜である舌、歯肉、頬粘膜、口唇が炎症を起こし赤くなったり、傷ついたりする口腔粘膜炎が起こります
また、抗がん薬の副作用で白血球や血小板が減少し、感染しやすい状態や出血しやすい状況になっている可能性があります
③胃潰瘍・十二指腸潰瘍(消化性潰瘍)
胃潰瘍とは
胃の内壁にできる傷や潰瘍のことを指します
十二指腸潰瘍とは
十二指腸の内壁にできる潰瘍のことを指します
お口との関連
歯を抜いた後の解熱消炎鎮痛剤として使用される非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
・ロキソプロフェンナトリウム(例:ロキソニン)
・ジクロフェナクナトリウム(例:ボルタレン)
が、消化性潰瘍を引き起こすことがあります
また、消化性潰瘍を罹患している患者さんに投与することで増悪させることがあるため注意が必要です
④肝炎・肝硬変
肝炎とは
肝臓の炎症を指し、様々な原因によって引き起こされます
主な原因にはウイルス感染(A型、B型、C型、D型、E型など)、アルコールの過剰摂取、薬物の副作用、自己免疫疾患、代謝異常などがあります
肝硬変とは
肝臓の慢性的な疾患で、肝細胞の損傷や炎症が進行し、肝臓の組織が繊維化(瘢痕化)することによって引き起こされます
肝臓の機能を低下させさまざまな合併症を引き起こす可能性があります
お口との関連
因果関係は判明していませんがが、扁平苔癬の患者さんを調べると30%〜60%にHCV感染を合併していると報告されています
また、血小板数の減少や血液凝固因子の産生低下により出血傾向が生じるため、歯肉から自然出血や粘膜下の出血班がみられることがあります
ただし、歯科治療における血液を直接扱う医療行為(観血的処置)でも、止血時間を十分にとれば出血が止まることがほとんどです
循環器疾患
①心疾患・不整脈
心疾患とは
心臓や血管に関連するざまざまな病気の総称です
心臓のさまざまな臓器に必要な酸素や栄養物質を輸送したり、産生された代謝物・老廃物を運び出している機能を障害する病気を指します
不整脈とは
心臓の拍動が正常なリズムから外れる状態を指します
心拍数が速くなったり遅くなったり、または不規則に拍動することがあります
お口との関連
①抗血小板薬・抗凝固薬などの内服薬の確認
虚血性心疾患、心臓弁膜症の手術後、心筋症、不整脈の患者では、抗血小板薬や抗凝固薬を内服していることが多いため、特に抜歯などの観血的処置の際に確認が必要となります
②ペースメーカー、埋め込み型除細動器などの確認
歯科治療器具がペースメーカー、埋め込み型除細動器に影響を与える可能性があるためこれらの有無を確認する必要があります
例)電気メス、超音波スケーラーなど
②高血圧症・低血圧症
高血圧症とは
血液が血管の壁にかかる圧力が異常に高い状態を指します
一般的に正常な血圧は120/80mmHgとされていますが、140/90mmHg以上が高血圧とされます
低血圧症とは
血圧が正常範囲よりも低い状態を指します
一般的に90/60mmHg未満の場合に低血圧とされます
お口との関連
①歯科処置に伴う血圧の変動
歯科処置で使用するアドレナリンを含む局所麻酔薬はその作用により血圧を上げる可能性があります
また、歯科治療の痛みが原因で血圧が上がる可能性もあります
過度の緊張や痛みにより、反射性の血圧低下を起こし、失神することがあるため注意が必要です
②降圧薬による歯科合併症
降圧役のうち、カルシウム拮抗薬を内服中の患者では歯肉増殖が起こることがあります
例)ニフェジピン
血液疾患
貧血・白血病・血友病
貧血とは
血液中の赤血球やヘモグロビンの量が不足している状態を指します
白血病とは
血液のがんの一種で、主に骨髄で異常な白血球が増殖する病気です
血友病とは
血液の凝固に関与する因子の欠乏または異常によって引き起こされる遺伝性の疾患です
お口との関連
血液疾患では、さまざまな口腔症状を認めます
・鉄欠乏性貧血→(舌炎、舌乳頭萎縮、嚥下障害など)
・巨赤芽球性貧血→(Hunter舌炎)
・急性骨髄性白血病→(歯肉腫脹)
・急性白血病、血友病→(口腔内出血)
・易感染症による口腔内感染→(口腔カンジダ症)
呼吸器疾患
①肺炎
肺炎とは
肺炎は、肺の炎症を引き起こす感染症で主に細菌、ウイルス、真菌などによって引き起こされます
お口との関連
肺炎と口腔内の関わりは大きく、特に
・誤嚥性肺炎
・人工呼吸器を使用している患者さんに発生する肺炎(VAP)
など肺炎予防における歯科診療の役割は極めて重要です
口腔ケアにより口腔内の分泌物内の細菌量を少なくしておくことは理に適った方法となります
②気管支喘息
気管支喘息とは
気道が炎症を起こし、狭くなることで呼吸が困難になる慢性的な疾患です
お口との関連
吸入ステロイド薬を長期使用している患者では、口腔カンジダ症がみられる場合があります
口腔内の刺激や乾燥、水や切削物の誤嚥により発作が誘発されることがあるため注意が必要です
③慢性閉塞性肺疾患(COPD)
慢性閉塞性肺疾患とは
主に喫煙や大気汚染などの環境要因によって引き起こされる慢性的な肺の病気です
気道の炎症や狭窄を伴い、呼吸が困難になることが特徴です
お口との関連
咳や痰が多い場合や息切れがひどい場合には、歯科治療を延期して体調の良い時期に行う・長時間の治療を避けるなど配慮が必要です
また、パルスオキシメーターで動脈血酸素飽和度(SpO2)をモニタリングすることが推奨されます
④結核
結核とは
主に肺を侵す細菌感染症で結核菌によって引き起こされます
感染は空気中の飛沫を介して広がり、咳やくしゃみを通じて他の人に感染することがあります
お口との関連
結核患者の歯科治療において、空気感染対策が必要です
患者さんの時間的・空間的隔離に配慮する必要があります
⑤睡眠時無呼吸症候群(SAS)
睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠中に呼吸が一時的に停止する状態を指します
著しい日中の眠気や倦怠感、起床時の頭痛などの症状を伴う睡眠関連疾患です
お口との関連
睡眠時無呼吸症候群の治療には歯科チームによる舌根部の気道を拡大する口腔内装置(OA)治療はもちろんのこと、副作用の早期発見やコントロールが重要です
腎・泌尿器疾患
①腎疾患
腎疾患とは
腎臓に関連するさまざまな病気や障害を指します
腎臓は体内の老廃物や余分な水分を排出し、電解質のバランスを保つ重要な役割を果たしています
腎疾患には、急性腎障害・慢性腎疾患・腎炎・腎結石・糖尿病性腎症などが含まれます
お口との関連
腎炎の治療でステロイド療法を行う際にはむし歯や歯周病などのチェックを行うことが推奨されています
この目的としては
①ステロイド療法の副作用である易感染症により口腔内の感染症が増悪するのを避ける
②患者さんの中にビスフォスフォネート関連顎骨壊死を予防する
などがあります
②下部尿路疾患(蓄尿障害・排尿障害)
蓄尿障害とは
尿を正常に蓄えることができない状態を指します
この障害は、膀胱の機能に問題がある場合や神経系の障害、また筋肉の異常によって引き起こされることがあります
排尿障害とは
尿の排出に関する問題を指します
尿が出にくい、頻尿、尿もれ、尿が出ない、また痛みを伴う排尿などが含まれます
お口との関連
抗コリン薬の口腔に関係する副作用には、抗ムスカリン作用に基づく口腔内乾燥症があります
免疫疾患・膠原病
①アレルギー
アレルギーとは
免疫系が特定の物資(アレルゲン)に対して過剰に反応することによって引き起こされる健康状態です
お口との関連
歯科領域におけるアレルギー疾患はおもに
・金属
・ラテックス
・薬剤など
に大別することができます
アナフィラキシーは原因物に接触して5〜15分でおこるため、既往歴の確認が大切です
②膠原病(シェーグレン症候群をの除く)
膠原病とは
自己免疫疾患の一群を指し、おもに結合組織や血管に影響を与える病気です
関節リウマチ・全身性エリテマトーデス・強皮症・皮膚筋炎・多発性筋炎にリウマチ熱を加えた膠原繊維(コラーゲン)の異常を認める6疾患を指します
お口との関連
膠原病により、口内炎を発症したり顎関節障害も起こる場合もあります
また、頸椎病変により歯科診療台にまっすぐ座れないこともあるため、タオルやクッションによる工夫や配慮が必要です
お薬による問題として
・顎骨壊死
・縫合不全
・味覚障害
・口腔カンジダ症、ヘルペス、歯周炎などの感染症
が挙げられます
③シェーグレン症候群
シェーグレン症候群とは
自己免疫疾患の一つでおもに涙腺や唾液腺が攻撃されることによって乾燥状態を引き起こす病気です
お口との関連
口腔内乾燥を訴えるため、個々に合わせて
・頻回の水分補給
・人工唾液
・保湿成分含有ジェル
で対応する必要があります
④アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎とは
慢性的な皮膚の炎症を伴う疾患で、おもにかゆみや赤み、乾燥などの症状が現れます
お口との関連
口唇が乾燥しやすいため、口唇をよく舐めがちです
口角炎もできやすく、しばしば繰り返してしまうため指導が必要です
感染症
①インフルエンザ
インフルエンザとは
インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症で、おもに呼吸器系の影響を与えます
お口との関連
口腔ケアにより口腔内細菌を減少させ、ウイルスの活性化を阻止することによりインフルエンザ感染の予防効果が期待できます
②カンジダ症
カンジダ症
おもにカンジダ属の真菌を指します
皮膚・口腔などの常在菌であり通常は免疫力が低下している際に発生する日和見感染症であります
お口との関連
超高齢社会を迎え、口腔カンジダ症の患者は増加傾向にあります
歯科衛生士による専門的な口腔ケアが口腔カンジダ症の予防に寄与しています
③後天性免疫不全症候群
後天的免疫不全症候群とは
ヒト免疫不全ウイルスが免疫担当細胞に感染し、免疫系が徐々に破壊されていくことでカンジダ症やクリプトコッカス症などの指標疾患を発症した状態です
お口との関連
院内感染予防を定期的に行う必要があります
神経疾患
①脳血管障害
脳血管障害とは
脳の血管に関する病気や障害の総称でおもに脳卒中(脳梗塞や脳出血)や一過性脳虚血発作(TIA)などが含まれます
これらの障害は、脳への血流が不足したり血管が破れたりすることによって引き起こされます
お口との関連
急性期では絶飲食、意識障害、気管内挿管などの処置に伴い口腔衛生の悪化を生じやすく、嚥下障害と相まって誤嚥性肺炎の危険性が高くなります
口腔内は常在菌が多く、歯の有無にかかわらず口腔内にバイオフィルムを形成しやすくなっています
そのため、急性期から口腔ケアに取り組むことが重要です
手指の麻痺や認知症がみられる場合は、症状や残存歯の状態を鑑みた口腔ケアの工夫が必要です
②てんかん
てんかんとは
脳の神経細胞の異常な活動によって引き起こされる神経疾患です
これにより発作が繰り返しおこることがあります
お口との関連
抗てんかん薬の副作用として、カルバマゼピンなどによる味覚障害やフェニトインなどによる歯肉増殖があります
歯肉増殖はブラッシング指導とプラークコントロールにより改善しますが、高度な場合は歯肉切除を併用することもあります
③認知症
認知症とは
記憶や思考、判断力などの認知機能が低下する病気の総称です
お口との関連
歯を磨く習慣を忘れたり、歯ブラシの使い方がわからなくなったりするためお家でのセルフケアが不十分になることによる
・口臭
・むし歯
・歯周病
が発生しやすくなったりします
また、認知機能障害が高度に進行すると嚥下障害も出現しやすく誤嚥性肺炎や窒息の原因となりえます
介護者に協力してもらい、なるべく早期から定期的な口腔環境のケア対策を行うことが好ましいとされています
④神経難病(パーキンソン病・筋萎縮性側側索硬化症)
神経難病とは
神経系に影響を与えるさまざまな疾患の総称です
これには、運動神経や感覚神経、脳、脊髄に関する病気が含まれます
お口との関連
神経難病では筋力低下や不随運動による口腔ケア困難や嚥下障害などがあります
また、治療薬による味覚症状や口渇・口腔乾燥もしばしばみられます
精神疾患
①心身症・神経症
心身症とは
心理的な要因が身体の症状や病気に影響を与える状態を指します
神経症とは
精神的な障害の一種で、主に不安や恐怖ストレスに関連する症状が現れる状態を指します
お口との関連
・心身症患者さんにおいて頻度が高いのは顎関節症です
他にも歯ぎしり、歯や舌の痛み、知覚過敏などがあります
・神経症患者さんには、歯の疼痛や口腔内の違和感を訴えるかたが多くいます
治療や検査を求めて多くの歯科医院の受診を繰り返す前に大きい病院へ紹介し、歯科と精神科と合わせてのアプローチが必要な場合があります
②うつ病
うつ病とは
気分が持続的に低下し、興味や喜びを感じにくくなる精神的な疾患です
お口との関連
舌痛や歯痛、味覚異常、知覚麻痺、咬合異常など訴えはさまざまですが、その症状に見合うだけの器質的原因がない場合はうつ病を疑う必要があります
また、うつ病では意欲低下のために口腔ケアができず、むし歯・歯周炎などを発症しやすいことにも注意が必要です
③統合失調症
統合失調症とは
精神的な障害の一つで、思考、感情、行動に影響を及ぼす病気です
お口との関連
ドパミン受容体を遮断することで生じる主な副作用は、口唇や舌の不随運動、不正咬合、顎関節脱臼であり、口渇も多く認められます
④発達障害
発達障害とは
発達の過程において特定の領域における困難が見られる状態を指します
おもにコミュニケーション、社会的相互作用、行動の柔軟性などに影響を及ぼすことがあります
お口との関連
診察の指示に従えないなど、発達障害児にみられる問題行動が親のしつけの問題と誤解されてしまう場合があります
理解度に合わせた説明や患者の恐怖、不安、衝動性に対する対応が必要です
絵カードなどを用いて視覚的に診療内容を説明することも有用です
自閉スペクトラム症では、口腔内の過敏症や音への敏感さが認められる場合があり、注意が必要です
がん
①がん
がんとは
体内の細胞が異常に増殖し、周囲の組織に侵入したり他の部位に転移したりする病気です
お口との関連
平成24年度より周術期口腔機能管理料が保険導入されました
その背景には、手術、放射線治療および化学療法などががん治療に際して、口腔衛生状態の良否が治療成績や患者さんのQOLに及ぼす影響が多くの研究により明らかとなったことが挙げられます
特に頭頸部癌、食道癌の手術では、がんの切除部位が口腔に近接しているため、口腔衛生状態が不良であると術後感染のリスクが高まります
また、化学療法によって口腔粘膜炎・ヘルペス・歯の知覚過敏などがあります
②頭頸部癌
頭頸部癌とは
頭部や首に発生する癌の総称で、おもに口腔、咽頭、喉頭、鼻腔、副鼻腔、唾液腺などの部位に影響を及ぼします
これらの癌は、喫煙や飲酒、HPV感染などがリスク要因とされています
お口との関連
鋭利な歯冠や義歯は舌癌の原因となり、放射線・化学療法による口腔粘膜炎に対して刺激になることがあるため、刺激となる歯を抜歯、または歯冠や義歯の辺縁を丸めます
また、感染しやすくなるため残根の抜歯・根尖病巣のある歯の治療を行い、舌苔の除去も行います
産科・婦人科疾患・妊娠
①妊娠による身体の変化
妊娠とは
女性の体内で受精卵が発育し、胎児が形成される過程を指します
お口との関連
①妊娠中の歯科治療
妊娠によるホルモンバランスや食生活の変化は、歯肉炎・歯周炎・むし歯の憎悪や妊娠性エプーリスを引き起こすことが知られており妊娠期の口腔ケアは重要です
母子健康手帳にも歯科検診の項目があり、妊娠は歯の健康に気を配るよう絶好の機会でもあるのです
②更年期障害
更年期障害とは
女性が更年期に入る際に経験する身体的および精神的な症状のことを指します
一般的には、45歳から55歳の間に起こることが多いとされています
お口との関連
更年期の女性には、口腔乾燥症や舌痛症などの口腔症状が多く現れます
原因としては、エストロゲン受容体が唾液腺や口腔粘膜に存在するため、エストロゲンの減少が直接症状を引き起こしている可能性などが考えられます
まとめ
医療のあり方も多様化している昨今、歯科衛生士のもつ専門性は医療のあらゆる分野で求められはじめており、今後かかわる医療職種も増えて行くことと思います
歯科衛生士をはじめ医療職の方々やその疾患にかかられている患者さん、その近親者のみなさまにお口とからだの関係、健康管理の方法のひとつとして参考になれば幸いです
参考文献
<代謝・内分泌疾患>
・沼部幸博:口腔ケアと疾病予防 糖尿病と歯周病医学のあゆみ
・日本歯周病学会:糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン(日本歯周病学会2008)
<消化器官>
・日本消化器病学会:患者さんと家族のための消化性潰瘍ガイドブック
・一般歯科診療時の院内感染対策作業班:厚生労働省委託業務「歯科保健医療情報収集等事業」一般歯科診療時の院内感染対策に係る指針
<循環器疾患>
・渡邉裕司:高血圧[橋本賢二編:デンタルハイジーン別冊 知ってて安心!全身疾患ガイド]
<呼吸器疾患>
・米山武義、吉田光由、佐々木英忠ほか:要介護高齢者に対する口腔衛生の誤嚥性肺炎予防効果に関する研究
<腎・泌尿器疾患>
・ビスフォスフォネート関連顎骨壊死検討委員会:ビスフォスフォネート関連顎骨壊死に対するポジションペーパー
<免疫疾患・膠原病>
・橋本賢二、増本一真:歯科衛生士のための全身ハンドブック
<感染症>
・HIV感染症治療研究会:HIV感染症「治療の手引き」
<神経疾患>
・厚生労働省:厚生労働省重篤副作用疾病別対応マニュアル.薬物性味覚障害
<精神疾患>
・大森哲郎:よくわかる精神科治療薬の考え方、使い方
<がん>
・藤本篤士、武井典子、片倉朗ほか:5疾患の口腔ケア
<産科・婦人科疾患・妊娠>
・山近重生、中川達也、中川洋一:歯科衛生士必携!有病者の対応チェアサイドSOSブック
<更年期障害>
・日本産科婦人科学会・日本女性医学会編:ホルモン補充療法ガイドライン