歯磨き用品

電動歯ブラシについて知ろう

電動歯ブラシとは

ブラッシングには一般的に手用歯ブラシが使用されます


しかし近年では数多くの電動歯ブラシが販売され、歯周病に対する予防、治療、メインテナンスの際のセルフケアとして注目されています

現在、多く市販されているものには
・電動歯ブラシ(高速運動電動歯ブラシ)
・音波歯ブラシ(音波振動式電動歯ブラシ)
・超音波歯ブラシ(超音波振動式電動歯ブラシ)

があります

電動歯ブラシ(高速運動電動歯ブラシ)

電動歯ブラシの起源は、1930年代後半にスイスで開発されたことに始まります。手動の歯ブラシでは十分にプラークを除去できないと考え、電動のブラシを開発となりました

初期

デザイン

初期の電動歯ブラシは、手動の歯ブラシにモーターを組み込んだもので、ブラシヘッドが振動することで歯を磨く仕組みでした(振動式高速運動電動歯ブラシ)

目的

このデバイスは、特に高齢者や身体的な制約のある人々がより効果的に歯を磨けるようにするために設計されました

商業化

その後、1960年代に入ると、スイスの技術を基にした電動歯ブラシが商業的に販売されるようになり、アメリカや他の国々でも普及が進みました
これにより、電動歯ブラシは一般家庭に広まり、さまざまな機能やデザインが開発されるようになりました

現在

振動や回転(反転)などの運動によってプラークを除去することができます
ストローク数は、毎分2,000〜10,000回程度と機種により様々です
毛先がうまくブラッシング部位に当たるとプラーク除去効果が高いのでブラッシング時間の短縮が可能となっています
また、歯肉のマッサージ効果もあるとされています

種類

電動歯ブラシ(高速運動電動歯ブラシ)には
・振動(上下)式
・回転(反転)式
・把柄部に手用歯ブラシを差し込んで使用するもの
があります

商品一例




また、上下運動と反転運動を組み合わせたものがあり、形態はコンパクトな丸型ヘッドタイプが増えてきました
電源は
・充電式
・乾電池式
があり、価格は安価なものから高価なものまで様々です

適応

操作方法が簡単なため、細かい操作が困難な場合や矯正装置の装着者に適しています
また、プラークコントロールに消極的な方へのモチベーションを高める時にも推奨されています

使用法と注意点

歯ブラシのヘッドは消耗品です
メーカーが推奨している期間で交換を行いましょう

歯磨剤を使用する場合は、研磨剤の入っていないものを選択すると良いでしょう
研磨剤の量が多かったり、研磨剤が硬かったりすると歯のエナメル質が削られてしまうことがあり、歯肉退縮や歯の摩耗を引き起こすこともあります
しかし、研磨剤そのものというより過度のブラッシング圧に原因があることが多いため力加減も合わせて確認しておく必要があります

歯磨剤は、
・電動歯ブラシ専用の飛散しにくいもの
・液状
・フォーム状
・ジェル状
のものを使用するのがおすすめです


電動歯ブラシだけでは、歯間部の清掃は不十分です
そのため
・デンタルフロス
・歯間ブラシ
などの清掃補助用具の併用が必要です

電動歯ブラシの振動は、口腔粘膜への刺激から唾液分泌を促す効果もありますが、違和感をもつ人もいるため、使用開始後も経過をみて今後の使用を考えてみましょう

音波ブラシ(音波振動式電動歯ブラシ)

現在販売されているほとんどの電動歯ブラシは音波振動式です

音波ブラシは、毎分約30,000回の振動による音波エネルギーでプラークを破壊する音波方式、微振動タイプの電動歯ブラシの一つです

音波ブラシには、リニアモーターの技術を利用しています

N極とS極を1秒間に約500回というスピードで切り替えることにより
歯ブラシを毎分約30,000回振動させ、音波を生じさせます

口腔内で、左右1〜5mmの振れ幅が唾液などの水分を激しく振動させ
同時に多量の泡を発生させます

その激しい水分の振動と多量の泡は、歯周病原細菌の線毛を破壊し、細菌の構造にダメージを与えます(ダイナミックフルイドアクション)

この特徴こそが電動歯ブラシにない特徴です

また、歯周組織の炎症軽減、歯肉の細胞増殖を活性化する作用もあり、
さらには歯肉や歯を損傷することが少なく唾液の分泌量を増加させるなどの効果もあります

種類

刷毛部の形態が円形、刷毛が歯間部や最後臼歯に届きやすく工夫された山切ブラシ、ワンタフトなどがあります

商品一例




適応

①歯周病の予防
②歯列不正がある場合
③歯周病の患者
④矯正治療中の患者(プラークの除去・装置装着時の疼痛緩和)
⑤細かい操作が困難な場合(小児、障害者、高齢者ら)
⑥歯の着色の除去
⑦デリケートな補綴装置装着者(インプラント、審美修復補綴物など)
⑧唾液分泌効果の期待(口腔粘膜への刺激による)

使用法と注意点

音波ブラシは、動かしても動かさなくてもプラーク除去率にあまり違いがないとされています
触る程度の軽いタッチで少しずつ移動させて使用するのが適切です
お口の中全体を約2〜3分で磨くことを目安にしましょう

超音波歯ブラシ(超音波振動式電動歯ブラシ)

超音波歯ブラシは、把柄部のあたりに内臓された超音波発振子が生み出す超音波と手の動きによってプラークを除去します

約1.6MHz以上の高い周波の音波である超音波を毛先に生じさせることにより、プラークと歯の結合力を弱めたり、再発性アフタ性口内炎の治癒や口内炎発症予防に効果的で、直接最近に影響を与えます

プラーク除去の点においては、補助的に利用することがおすすめです
また、骨や皮膚の創傷の治癒に促進効果が認められています

種類

毛先は、歯周ポケットに挿入しやすいように
・超極細(普通の歯ブラシの1/10の細さ)
のものがあります
また、タイマー機能により3分後には自動的に停止する仕組みになっています

商品一例



適応

音波歯ブラシと一緒で
①歯周病の予防
②歯列不正がある場合
③歯周病の患者
④矯正治療中の患者(プラークの除去・装置装着時の疼痛緩和)
⑤細かい操作が困難な場合(小児、障害者、高齢者ら)
⑥歯の着色の除去
⑦デリケートな補綴装置装着者(インプラント、審美修復補綴物など)
⑧唾液分泌効果の期待(口腔粘膜への刺激による)

が挙げられますが
特に歯周ポケットが深い歯周病の方や再発性アフタ性口内炎の方に適していると言われています

禁忌

心臓にペースメーカーや除細動器を使用している方は、
誤作動のおそれがあるため使用不可

使用法と注意点

手用歯ブラシのように毛先を歯面に当てて軽く動かし、プラークを機械的に除去する必要があります

電動歯ブラシのメリット・デメリット

メリット

①手用歯ブラシの小刻みに振動させるという難しい操作が省かれ、短時間にプラークが除去できる
②ブラシをつけ替えることで、様々な部位(舌・歯間部など)に使用できる

デメリット

①手用歯ブラシに比べて高価である
②高齢者などによっては、充電操作などの電気器具の取り扱いが困難な場合がある
③大きく、重量があるため使用の継続が負担である
④慣れていない場合、振動を不快に感じたり、手用歯ブラシの方が磨いた感じがすることがある

まとめ

日本の電動歯ブラシの普及率(全世界の世帯浸透率)は、

世界平均24%

ドイツ42%(最も高い国)

日本5%

となっています

日本の成人の8割以上が歯周病に罹患している実態から、多くの歯周病患者は歯を磨いていないのではなく、歯がうまく磨けていないと考えられます

手用歯ブラシで綺麗に磨いているけど、いつも歯医者さんに指導を受けてしまう方、短時間で歯磨きを終えたい方はぜひ検討してはいかがでしょうか?

参考資料

日本歯周病学会(高齢者の歯周治療ガイドライン2023)
医歯薬出版株式会社(デンタルハイジーン2020.6)